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Vol.48:風しん大流行、予防接種対象拡大へ

風しん大流行 “過去10年で2番目に多い”前年比30倍

19年から風しん予防接種対象拡大 39~56歳男性が3年無料に

風しん患者 2,800人超
ニュース等でご存知の方も多いかと思いますが、昨年は風しんが大流行し、過去10年間で最大の流行となった2013年に次いで2番目に多いことが、国立感染症研究所により発表されています(「風しん急増に関する緊急情報」2018年)。
感染研によると、国内で患者さんが増え始めたのは18年7月下旬頃からで、累計患者数は2,806人にのぼり、前年(17年)に比べて約30倍となっています(図1)。

図1 風しん累積報告数の推移 2012-2018年(第1~51週)
Cumulative rubella cases by week, 2012-2018 (week 1-51) (based on diagnosed week as of December 26, 2018)

首都圏の男性患者が多い
地域別にみると、東京、千葉、神奈川などの首都圏を中心に、西日本の大都市圏に多くみられ、報告がない県は青森県、大分県の2県のみとなっています(図2)。
また、性別および年齢別な特徴としては、全患者の96%にあたる2,685人が成人で、このうち男性は2,280人と女性の4倍以上であり、男性患者の6割超が30~40代であったのに対して、女性の場合は妊娠出産年齢である20~30代が6割を占めています(図3)。

図2 都道府県別人口百万人あたり風しん報告数 2018年 第1~51週 (n=2806)
Reported rubella cases per 1 million population by prefecture, week 1-51, 2018 (as of December 26, 2018)
1901b

図3 性別および年齢別の風しん報告数 2018年 第1~51週 (n=2806)
感染研の資料をもとに作成
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風しんの危険度はエボラ出血熱やエボラと同じ?
風しんは、風しんウイルス(rubella)によって起きる急性の発疹性感染症で、強い感染力を有し、くしゃみやせきなどのしぶきから感染(飛沫感染)し、2~3週間の潜伏期間の後、発熱や発疹、リンパの腫れ、関節痛を認めるなど、特に成人で発症した場合は小児よりも重症化(まれに脳炎や血小板減少性紫斑病を合併)することがあります。感染した場合、発熱などの症状を和らげる対処療法以外に治療法がないため、ワクチンの予防接種による感染予防が重要です。
特に妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんが先天性風しん症候群(CSR)になり難聴や心臓病、精神発達障害などを来たす恐れがあり、12~13年の大流行のときにはCRSの赤ちゃんが45人生まれ、うち11人が亡くなったとされています。
昨年10月には、米疾病対策センターが、風しんの免疫がない妊婦は日本へ渡航しないように勧告を出しました。その際の危険度を示す指標は「レベル2」で、アフリカの一部で流行するエボラ出血熱やポリオと同レベルと位置付けられています。

風しん定期接種の無料化
国は14年に「東京五輪・パラリンピックのある20年までに風しん排除を達成」することを目標に掲げており、昨年の大流行を受けて、新たな対応策を打ち出しました。
それが、「19年から3年にわたり、ワクチン未接種のため感染リスクの高い39歳~56歳男性(約1,600万人)を公的予防接種の対象として、抗体検査を含めた費用を原則無料」とする方針です。
ワクチンの定期接種は現在、男女ともに幼児期に計2回実施されていますが、当初は女性だけを対象としており、昭和37年4月2日から54年4月1日に生まれた39~56歳男性は、定期接種の機会がありませんでした(図4)。このため、感染を防ぐ免疫抗体の保有率が他の世代よりも低く、昨年の風しん患者の中心となっています。
ワクチンの生産は、手続き的にも技術的にも急な増産が難しく、コストの観点からも、まずは抗体検査を受けてもらい、免疫が十分でないと判断された人にワクチンを接種する、二段構えの対応とする方針です。

図4 風疹(風しん)含有ワクチンの定期予防接種制度と年齢の関係(2018年12月1日時点)
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ワクチンの種類
風しんワクチンには風しん単独以外に、MRワクチン(麻疹・風しんの2種混合ワクチン)、MMRワクチン(おたふく・麻疹・風しんの3種混合ワクチン)、MMRVワクチン(おたふく・麻疹・風しん・水痘の4種混合ワクチン)*があります。
*おたふく(mumps)・麻疹(measles)・風しん(rubella)・水痘(valicella)の頭文字を組み合わせた名称
このうち、国内の定期接種で使われているのはMRワクチンで、MMRワクチンは1989年から1993年4月までの間、副作用で無菌性髄膜炎が多発したことから接種が中止となり、MMRVワクチンは国内では承認されていません。

自治体や企業でも積極的なサポートが始まる
こうした動きに対応して、風しんの抗体検査・ワクチン接種に対する費用助成を行う自治体や企業が増加しつつあります。
自治体によっては、妊娠を希望する女性や妊婦の同居家族など、対象をさらに広げるところも出てきています。
1月8日の感染研による最新発表では、昨年12月17~13日の1週間の新たな患者報告数は84人で、週当たりの新規患者数は、8月末以来16週ぶりに100人を下回りました。
流行が落ち着きつつある様子もうかがわれる一方、最大流行となった12~13年には新規患者数が一度減った後に再び増加に転じたこともあり、感染研は引きつづき積極的な抗体検査・ワクチン接種を呼びかけています。
これまで風しんに罹ったことがなく、ワクチンを受けていない、あるいは接種歴が不明という方は、ぜひ一度、居住地の自治体のホームページ等を確認されてみてはいかがでしょうか。

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