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ケース25:CSOの新たなモデルの担い手 ― 第1回 Health Management Solutions(HMS)―


岩間 陽子 (Iwama Yoko)
[プロフィール]
看護師として約8年間臨床経験を積んだ後、海外留学を経て現職。米国で開発された糖尿病患者教育ツールを日本で普及、チーム医療を推進(実績:研修人数3571名、約670施設へツールの普及/15ヶ月/2CE)、日本法人では看護師初のアソシエイト・マネージャーとして、CE (Clinical Educator)の管理や育成を行うとともに、新規プロジェクトの立ち上げをデザイン。


――現在の業務についてお聞かせください。

岩間:看護師の専門スタッフ(CE: Clinical Educator)で構成されたHMS(Health Management Solutions)という部署におります。HMSは、全国の医療機関を訪問し、看護師等の医療従事者に対する教育・啓発活動を行い、患者に対する薬物治療効果の最大化と副作用の最小化を促進しています。日本ではあまり知られていませんが、欧米では広く普及しているサービスの1つで、医療従事者の指導の質を上げることによって、患者の服薬アドヒアランス向上や治療のドロップアウト防止などの成果が期待されています。現在は、アソシエイト・マネージャーとして、HMSプロジェクトの計画や実行を統括し、CEの活動管理や看護師の採用等にも関わっています。

――CSO業界への転職の決め手となったものは?

岩間:私がCSOを目指した当時は、看護師がこのような業界で働くという例はありませんでした。看護師資格を活かしながら、新たな形で仕事をしてみたいと思っていた頃、弊社がHMS事業を日本で最初に立ち上げたことを知り、CSO業界の門をたたきました。もともと、教育に関心があり、院内の限られた空間だけでなく、多くの人に開かれた場で、看護師としての知識・経験を伝達する活動を展開したいと思っていました。弊社の事業担当部の方から、HMSビジネスのお話をいただいた際に、この業界で経験を積んだら、看護師としての新たなキャリア実現に結びつくのではないかと思い、この道を選びました。

――そして看護師としてのキャリアと海外留学の経験を生かすポジションをみつけられたのですね。

岩間:まず外資製薬メーカーで、日本初のHMSプロジェクトを担当し、糖尿病領域のClinical Educatorを経験しました。米国で開発された糖尿病患者教育ツールを日本国内で普及するために、海外でトレーナーズ・トレーナー(トレーナーを育成するトレーナー)としての研修を積んだ後、全国の医療従事者に対して患者指導の方法について広く情報提供しました。

現在は、内資と外資系製薬メーカーにて、自己免疫疾患のHMSプロジェクトを展開しています。毎月クライアントと会議を開き、プロジェクトの進捗状況や課題の共有を図り、信頼の構築に務めています。CEは全国を訪問しているので、遠隔でのマネジメントになるのですが、プロジェクト目標と現場のギャップをいかに埋めていくのか、成果をどのように上げ、顧客満足に繋げていくのかを共に考えるように心がけています。

同時に私のもう1つのタスクとして、HMSの新規ビジネスモデル確立に向けた提案があります。医療現場で起きている課題に主眼をあて、薬剤の適正使用の推進や副作用の対処方法等について、製薬企業がどのような形で医療従事者に情報提供をしていくべきかの意見交換を行っています。主に、社内の事業開発部のクライアント同行によってこれらのサポートにあたっています。

――ご苦労もあったと思いますが、どのように克服なさいましたか?

岩間:弊社はもちろん、クライアントとしても看護師のプロジェクトは初めてでしたので、ほぼゼロからの立上げという意味では、最初の1年間は大変でした。HMSの存在を知っていただくと共に、自分たちの組織構築やアウトカム(成果)の出し方を考える上で、周囲との積極的なコミュニケーションがとても大切でした。全国の医療機関を訪問し、初めて会う医療従事者の前で専門性の高い情報を発信することは、かなり勇気がいり、最初は不安を感じることもありましたが、説明を聞いてくださった医師や看護師、クライアントMRからの感謝のお言葉をいただいた時には、非常にやりがいを感じました。また、この気持ちが、より専門性を高めていこうというモチベーションに変わっていきました。

仕事に悩んだときは、とにかく走ることだと思います。医療現場や製薬企業の方の想いをより確実に実現していくためには、自分の仕事に妥協せず、全力で向き合うことが大切です。信頼を得るという点では、看護師として培った経験を活かして、質問に即答できるように事前準備は怠りませんでした。社外のネットワークを活用して、クライアントの抱える課題の解決へ向けた活動も実施しました。時には、失敗もしましたし、戸惑うこともありましたが、今日出来たこと、相手に喜ばれたことを思い起こし、自分のモチベーションを下げない努力をしてきました。

――CSO業界で会得したことは何ですか?

岩間:CSOという会社は、患者や医療従事者の満足度と、クライアントである製薬メーカーの満足度の2方面を常に意識していかなければなりません。この業界に入って、顧客ニーズに焦点をあてた活動を第一に意識するようになったと思います。専門的な知識を常に求められるので、クオリティの高いサービスを維持するには、薬剤知識の他にも、医療情勢や看護等についても横断的に学ぶ意欲は欠かせません。昨今の医療問題に関心を深めるとともに、製薬企業に対する戦略思考や問題解決を前向きに捉えるマインドを持てるようになったことは、CSOだからこそ経験できたことだと感じています。

私たちHMSが関わっている製薬企業のプロジェクトは、薬を売るためのプロモーション活動とは異なります。現場の医療従事者から患者さんの不安やニーズをすくいとって、疾患や薬剤の理解がより深まるような情報を的確に発信し、患者さんが安心して治療を継続できるように支援することが求められています。HMSではこれらのニーズに対し、看護師の視点から、現場に合わせた解決策を提案できることが強みだと思っています。

――今後のキャリアビジョンをお聞かせください。

岩間:超高齢社会に突入している日本では、複雑な疾患を抱えて生活をしていく患者さんは今後も増えていきます。医療や環境の変化が激しい現代におけるキャリアの在り方としては、自ら選択肢を狭めず、状況に応じて柔軟に対応できる能力を身につけておきたいと考えています。看護の専門性を高め、経験値を上げることも重要ですが、病院だけでなく、すべての生活の場におられる患者さんやご家族が、安心して治療に専念できる環境を作っていくことが大切です。相手の想いを汲み取り、そこに存在する問題を解決することで、誰からも信頼されるサービスの提供を心掛けていきたいと思っています。そして、HMSを、CSOの新たなビジネスモデルとしてしっかりと全国に根付かせ、更に継続的に疾患や薬剤への理解が深まるような情報提供を、患者さんに還元していける仕組みづくりに挑戦していきたいと考えています。

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