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MRのためのよくわかる○○○

Vol.41:「AIにより変わる医薬品業界」

「AI」いわゆる人口知能の急速な発達により、さまざまな分野の仕事に影響が出てくることが連日報道等で取り上げられています。自動運転を可能にしたAI搭載の車の話題などが多いようですが、医療においても遠くない将来にAIが診断から治療までこなしてしまい、医師に取って代わるのではないかとの予測も見られます。
例えば2016年には自治医科大学で「医師の病名見逃し防止」を目的に、実際の診断にAIシステムが導入されています。また、腹腔内視鏡の手術支援ロボットとして「ダヴィンチ」が広く実臨床で活用されるようになっていますが、米国では2003年~2015年のロボットの支援システムの腎摘除術が約30%を占めるまでになったとの報告が医学誌で掲載されています。
IOT(Internet To Things)の発達も見逃せません。パソコンやスマホ等の情報通信機器に限らず、全ての「モノ」がインターネットに繋がることで、生活やビジネスが根底から変わろうとしています。身体にセンサーを付けて、体温や心拍数、血圧等の生体情報をモニタリングする、いわゆる「ウェアラブル端末」も身近な機器になりつつあります。ウェアラブル端末で医師の問診や診断の一部が不要になるほかに昨年11月には、患者さんの薬の飲み忘れを防ぐため、世界初の「デジタル錠剤」として「エビリファイ」の極小センサー付きの錠剤が大塚製薬から開発、承認され大きな話題になりました。これは薬剤そのものがウェアラブル端末になったもので、アドヒアランス向上に大きな期待が寄せられています。
昨年3月の厚労省の発表では、2033年までに現在の医師不足の状態から一転し、医師が供給過剰の時代が来ることが予測されていますが、AIやウェアラブル端末の発達はこの「余剰医師」時代の到来をもっと早くするかもしれません。

製薬企業の創薬におけるAI活用の動きも始まっています。京都大学や製薬・IT関連企業など約70社で作る共同研究体は、2017年7月から、創薬専用の人工知能(AI)の開発に乗り出すと発表。1剤当たり1,000億円超にも上る開発費の半減を目標に、世界中の製薬企業が新薬開発でしのぎを削るなか、オールジャパン体制で日本の国際競争力を高め、医療費の削減を目指します。共同研究体には、京大のほか東京大、理化学研究所、武田薬品工業、富士通などが参加。文部科学省と厚生労働省は約5億円の研究費を拠出し、20種類のAIを3年後を目処に完成させ、実用化する計画です。
製薬企業はMRの働き方にもAIを導入しようとしています。既にコールセンター業務を人を介さず全てAIで医療機関への回答を導く取り組みが進められていますが、遠隔地やMRリソースが足りないエリア、訪問規制が厳しい先への対応に、パソコンやスマホの双方向システムを活用したリモートのウェブディテールMRを導入または検討する企業が増えています。また、これまでに蓄積されている実消化デーやMRの活動履歴、ウェブサイトのアクセスログ等のデーターを分析し、営業・マーケティング活動プロセスへ利活用するためのデータマートを構築しています。デジタルディテーリングの強化により、MRの活動効率が高まると期待される一方で、新たな価値を生み出すためのチャレンジがなければ、MRの役割がAIに奪われかねないとも限りません。では一体、MRが生き残るために何が必要なのでしょうか?
高齢化や人口減少を背景に医療を取り巻く環境が激変するなか、さまざまな制約下でいかに医療現場のニーズにマッチしたサポートを行えるかがより重要になっています。地域医療包括ケアシステムの構築が急がれるなかで、MRにはいかに医療の一翼を担えるかが問われています。MRは自社製品のみならず他社製品や医療全般、制度や業界動向、さらに地域の実情に精通し、「MRに聞けば何でもわかる」というコンサルタント的な役割が求められるようになっています。多面的な知識や経験に加え、多様なステークホルダーから「このMRに会いたい」と思われるには、コミュニケーション力や人間としての「魅力」(人間力)も重要になるのではないでしょうか。そしてその根幹には、何より人を想い、世の中に貢献するというデディケイトな気持ちが大切になると思います。
MRという職種が、社会や業界の動きに応じて役割・機能を変えながらも、「患者さんのために」という変らない想いのために、プロフェッショナルとして価値を創造し続ける存在となることを願ってやみません。

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